Open Source Robotics Foundationという新しい団体に注目
Open Source Robotics Foundation(OSRF)という新しい非営利組織が3月に立ち上がった。これはもともとはWillow Garage社のアイデアで、同社が開発を先導しコミュニティーを形成してきたロボット開発用ソフト「ROS」の、今後の開発を引き継ぐための団体として設立準備が進められた。
ところが、OSRFが世間に公になったのは、4月10日、DARPAのロボティクス・チャレンジが発表になった日だ。なぜならば、OSRFがロボティクス・チャレンジで大きな役目を担っているからだ。
先日、WSJ日本版のコラムでも触れたが、ロボティクス・チャレンジでは、定められた課題をこなすロボットだけでなく、シミュレーターの開発に大きな期待が寄せられている。DARPAは次世代ロボットの市場創出を阻んでいる1つの要因が設計ツールの不備にあると考えていて、今回チャレンジのために開発されるシミュレーターがその突破口になると期待しているのだ。DARPAプログラム責任者のギル・プラット氏はこのシミュレーターが、「半導体産業の興隆につながった電子回路のシミュレーション・ソフト『SPICE』」同様に重要なカギを握るようになる」と語っている。
DARPAからこのシミュレーターの開発委託を受けたのがOSRFだ。「Gazebo」というオープンソースで、マルチ・ロボットの3次元シミュレーション・ソフトが土台になる。もともとは南カリフォルニア大学の研究者たちが開発し、後にROSのコミュニティーに採用されてから、一躍、知名度があがったものだ。OSRFはDARPAから資金提供を受け、ロボティクス・チャレンジの競技で使われるシミュレーション・ソフトを開発する。実際、求人もしている。
DARPAがこのように重要視しているシミュレーターに、オープンソースのものが選ばれた点が興味深い。
そしてOSRFをリードするメンバーを見るとさらに興味深い。
☆まずはWillow GarageのBrian Gerkey氏が同社を退社し、OSRFのCEOに就任する。Gerkey氏はROS開発の中心人物。これはROSの開発がほぼ全面的にOSRFに移行することを意味し、Willow Garageが第3フェーズに突入することを示唆する。それがどういうフェーズになるのか、これから取材したい。
☆アイロボットの共同創業者のHelen Greiner氏が取締役に就任している。Greiner氏はもうアイロボットを退社し、新ベンチャーを立ち上げているが、アイロボットのもうひとりの共同創業者で、現CEOのコリン・アングル氏が、常々、ロボット分野におけるオープンソースの動きに否定的な見解を示している点から興味深い。
☆韓国のYujin Robotの幹部(Sam Park, executive vice president)が取締役となっている。Yujin Robotといえば、NECのPaperoに似たロボット「iRobi」を製品化している会社。掃除ロボットも売っている。そして同社はこのほど、Willow Garageの開発用ロボット「TurtleBot」の新バージョンで協力していることが明らかになった。TurtleBot1はアイロボットのCreateを土台にしていたのに対し、TurtleBot2はYujin社のロボット「Kobuki」をベースに使うというのだ。(IEEE Automatonの記事が詳しい。)TurtleBotはWillow Garageとアイロボットが仲良くなるきっかけになるのかなと思いきや、こういう展開になるとは。
DARPAロボティクス・チャレンジでハードを提供するBoston DynamicsのMarc Raibert社長も、学会で講演した際に「ロボットでオープンソースなんて聞くと気味が悪くなる」と言っていたので、「オープンソース派」対「反オープンソース派」は「米国西海岸」対「米国東海岸」の構図なのかな、と思っていた。しかし、今回、Greiner氏がOSRFに加わったこと、それから、もう1人のアイロボット共同創業者、元MIT教授のRodney Brooks氏が設立したHeartland Robotics社がROS開発者会議「ROSCon」のスポンサーになっていることから、そういうわけでもなさそう。
ロボティクス・チャレンジではBoston Dynamicsのハードとオープンソースのシミュレーターが組み合わせて使われるので、なんだかとってもおもしろいな、と思ったしだいです。